嘘のような本当の話

 
これは会社の後輩のJ君から聞いた、嘘のような本当の話である。
多少記憶のあいまいな所があるが、話の流れは概ね次のようなものであった。
 
その日J君はひどく酔っ払っていた。
 
会社のサッカーチームに所属しているJ君は、幹事となってサッカーチームの忘年会を
企画、調整していた。しかし当日、本人は仕事の都合で忘年会に遅刻してしまい、
会の半ばごろに到着して、周りの盛り上がりに合わせ、ハイペースでお酒を飲んでいった。
お店をでる頃にはすでに出来上がっていたJ君であったが、その後、二次会、三次会と
場所を変えてお酒を飲んでいった。その記憶も、後日チームメイトからの話を聞き
そういえばと思い出しながら話であったが。
 
J君はその日ひどく酔っ払っていた。
 
翌朝、どうやって帰ったかも分からないままJ君は自宅のマンションで眼をさました。
隣を見るとそこに見慣れない人が眠っていた。
はっきりと思い出せないが、サッカーの後輩(I君としよう)と最後まで飲んでいて、I君の
終電がなくなったから仕方なく家に泊めてあげたような気がする。
こんな顔だったかなとも思ったが、同じ部署でもなく、サッカーでたまにしか会わない子であり
まぁ寝起きの顔なんて違って見えるからそんなもんだろうとJ君は思っていたそうだ。
 
I君が眼をさまし声をかけた。「おはようございます」。J君は「お~、おはよう、気分はどうや?」
「だるいっすねー」と先輩、後輩の会話をしていたそうだ。
 
I君は帰る準備をしているが、どうやら携帯が見つからない。しばらく探していたが
諦めたらしく、「すみません、俺の携帯に電話してもらっていいですか?」と声をかけた。
J君は、幹事をしていたので、携帯にメモリーが入っている。掛けると呼び出し音はなっているが
周りから聞こえている様子は無い、I君も耳をそばだてて自分の携帯が鳴るのを待っている。
どこかに落としたか?と思った、、、、が!!「はい、もしもし○○ですけど」、I君は
まだ突っ立ったままだ。「お前なんででるとや?」「え、なに言ってるんですか?」、「お前が
携帯無くしたから今かけたんだけどよ???ちょっと待って、後で掛けなおす」、、、「お前誰よ!!!
 
話を整理すると、その侵入者(H君としよう)も昨夜ひどく酔っ払っていて、朝起きた時、
知らない所で寝ていて驚いたそうだ。しかし、普通の会話が始まったため、覚えてないが、
酔った勢いで仲良くなって泊めてもらったのだろうと判断したそうだ。
話を聞くとどうやら家は近所らしい。携帯は見つからずしかも財布までないとの事。
とりあえず、二人は携帯と財布を捜しながら、H君の家まで歩いていったが結局みつからず、
見つかったらお互い連絡する、Jさんご迷惑おかけしました、と行って別れた。
J君が家に帰っている途中、H君からすぐ電話があった。携帯と財布が玄関にあったそうだ。
どういう事か聞いてみると、H君の母親曰く、いったん家に帰ったH君は、財布と携帯を玄関に置き、
すぐ家を出て行ったそうである。それっきり、連絡のとれなくなったH君が数時間後にまた
ひょっこり戻ってきたと言う訳だ。しかも後日後輩のI君に話をきくと、確かにあの晩、I君はJ君と最後まで
飲んでいて、終電がなくなり、J君の家に泊まったそうである。もちろん、その時は二人しか
いなかったと言っている。つまり、朝、始発が出る時間にIくんは家を出て行き、鍵の開いていた
J君の家にH君が忍び込んでいたと、まさにミラクルな展開になっていたのである。
 
J君は家に入ってきたH君をすごい奴っすね、と言っていたが、いやどちらも十分にすごい奴です。
書いていて自分でもありえないと思ってしまうが、これは嘘のような本当の話である。